48号コラム(2010.06.23)
『二通の挨拶状』
 花便りと一緒に、今年も多くの着任の挨拶状が届きました。  苦楽を共にした同僚や、旧知の便りはうれしくありがたいものです。昨今で は、年度末の忙しさに紛れ、挨拶状で異動を知ることも多く、「地元に着任し ました」という元同僚の喜びや、「子離れができない」という単身赴任の母親 の心境も知ることになります。  そうした中で、今年はいつもと違う二つの挨拶状がありました。  一通目は、定年退職の挨拶状です。この春に三十八年間の教師生活を終えた 恩師からのものでした。  私の母校の中学校に初任で着任され、入学式からご指導いただいた恩師とは 十歳の年齢差です。同じ教師の道を歩んだ私は、恩師を十年先の道標、大先輩 としてきました。それだけに、恩師の退職には何かしら寂しい思いを感じてい ましたが、届いた文面には、懐かしい字体で「しっかりやりなさい」というエー ルが記されていました。春風が体を通り抜けたようで、残り十年の活力をいた だいた挨拶状になりました。  もう一通は、今春高校を卒業し、大学生活を始めた友人の娘さんからいただ いたものです。葉書には、進学した仙台の大学で法律を学びたいと力強く書か れていました。  さしてお世話をした覚えはないのですが、葉書の隅には感謝の気持ちが肉筆 で綴られていました。父親の勧めがあったにしても、このような葉書はそう簡 単には書けないものです。誠実な父親の背中をしっかり見て成長したに違いな いと感心しながら、こんな‘いわてっ子’を育てたいと思わずにはいられませ んでした。 (利)
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