50号コラム(2010.11.02)
『恩師との再会』
 先日、中学校2、3年時の担任を囲む会に参加しました。その案内には、現 在カナダ在住の恩師も、体力的な衰えから今回が最後の帰国となるかもしれな いとのことで、ぜひ参加を、と記されていました。恩師は、とても真面目で熱 心な方でしたが、何か事あるごとに正論で我々に説諭するので、正直疎ましい 思いを抱くこともありました。どちらかというと苦手な女性教師であり、お会 いすることを避けていた方でした。  その囲む会で、恩師は、自らの教師生活を振り返り、熱く語ってくれました。  「生徒の命のためなら、私はこの身を投げ出す覚悟だった。どんなことがあっ ても生徒の命を守ろうと思っていた。生徒に反抗されても私は生徒が好きだっ た。生徒と心から向き合うことを大切にしてきた」  この言葉に、教師という仕事に真剣に取り組んだ一人の女性の姿に感動を覚 え、心から尊敬の念を抱きました。そして、この方に担任をしていただいたこ とは、どんなにありがたいことだったのかを思い知らされたのです。  ところで、我が恩師は、2時間半のこの会で、大半は一人で明朗に話されて いました。日本語に飢えているからとのことでしたが、本当に体力が衰えてい るのかと、皆が疑問に思うほどでした。そこで、意を決して「先生、今回が最 後の帰国ですか」とお聞きしました。すると、「真君、何を言っているの。私 は来年も帰ってきます。またあなたたちとお会いするわ」と仰せられました。  いつが最後の帰国になるのかと思いつつも、次回の再会を楽しみに思える夏 の午後でした。 (真)
コラム・バックナンバー
メルマガ・コラムTop
教育センターTop