80号コラム(2014.03.19)
『「自分にできること」から「みんなができること」へ 』
 初任の時、自分にできること、1年間やり通すこととして、子どもたちが見つけ てきた「はしりもの」を毎日学級通信で紹介することを子どもたちの前で宣言した。  最初は、「学校に来る時、カエルが鳴いていました。用水路のわきに、つくしが 出ていました。」程度で、ネタを捜すのが苦痛だった子どもたちも、2ヶ月程経っ た頃から自分なりの「問い」とそれに対する解釈が加えられるようになってきた。 「チョウは朝早く羽化します。チョウは弱い生き物だから早く羽化して危険から身 を守るためだと思います。」別の子は「セミは夜に羽化するので、敵から襲われる ことが少ないからチョウよりも長い時間かけて羽化できると思います。」というよ うに、自然を見る目も広がっていくことを教えられた。  教室では、子どもたちが集めたり拾ってきたりしたものを、水槽やケージで飼っ た。モルモット、シマヘビ、ザリガニ、イモリ、チョウ、グッピー、カイコ、子ど もたちがもってくるものは何でも飼った。先輩方からは、「4年2組動物園」と命 名され、いい気分になっていた。毎日脱走するシマヘビのシマちゃんとイモリには 困った。シマちゃんは教室の外には逃げていかず、机の中で休んでいた。登校して きて、勉強道具を机に押し込もうとしても入らないので、中を覗いた子どもが「先 生、シマちゃんが入っています。」と言いつつ、またシマちゃんの部屋に戻す。 イモリは、いつも3階から階段を降りて1階のポンプ室の前で綿ぼこりになってう ごめいていた。初めの頃は、その綿ぼこりの正体をイモリと気付かずに「ゴミが生 きている。」と学校中大騒ぎになったこともあった。  授業中に、教室にハトが飛び込んできた。その後を追って大きな塊が飛び込んで きて廊下の壁に激突した。捕まえてみたらハヤブサだった。子どもたちは大喜びで 「ハヤちゃん」と名付けて世話をした。ハヤちゃんとのお別れの日、空高く小さく なっていく姿に手を振り泣いている子どもたち。  そんな初任1年目も終わろうとする3月になり、後輩が入って来ることに気付い た。自分にできることしかやってこなかった自分、自己満足でしかも理科の教員ぶ っている自分があったからだ。  慌てて高松のセンターに勤めている先輩に相談して理科の勉強会「土曜会」を立 ち上げた。先輩や後輩との実践交流を通して「自分にできること」から「みんなが できること」へつなげていきたいと思って立ち上げた「土曜会」もいつの間にか29 年が過ぎた。(典)
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