生物の教材紹介

ミドリゾウリムシを用いた実験
 学校の周辺の池などにも生息しているミドリゾウリムシ(Parameciumu bursaria)は、長さ100μm程の単細胞生物です。細胞内に300〜500個のクロレラ(Chlorella)を共生させているために緑色に見えます。色から見れば植物的、細菌を捕食し動き回る姿は動物的な生物です。明るいところで培養すると共生しているクロレラが光合成をして、その産物をゾウリムシに供給するので、えさを与えなくても長期間飼育培養が可能な教材です。
 生物の教科書にでてくる定番のゾウリムシより小型ですが、収縮胞、繊毛の動き、原形質流動、走性の観察など多目的に利用できます。また、暗いところで培養すると、クロレラの数が減少した白化ゾウリムシが得られます。共生体はミドリゾウリムシとクロレラとを分離して培養することができ、それらを再感染させることも可能です。共生機構に関する研究や概日リズムに関する研究やなど期待される研究材料です。
1 ミドリゾウリムシの培養
 明るいところにおいておけば、室温で簡単に培養できる。クロレラが光合成をするので、特にえさを加える必要はない。
  ・ 管びんに再沸騰水を入れ、冷えたらドライイーストを少量
    (水50mlに約30粒)加え、1日放置する。
  ・ 培養液にミドリゾウリムシを入れ、直射日光の当たらない
   ところに置いて培養する。
 
2 観察方法
 ミドリゾウリムシの動きを弱めて観察しやすくするために粘調な溶液を加えて観察する。細胞が動かなくなって
 も、繊毛や原形質流動の動きは観察できる。
  ・ スライドガラス上に爪楊枝を使って3%メチルセルロース(400cps)の土手(内径約5mm)をつくる。
  ・ 土手の中にパスツールピペットで培養液を1滴滴下してカバーガラスをかけて顕微鏡で観察する。


3 ミドリゾウリムシ細胞内のクロレラの観察
  合成界面活性剤はミドリゾウリムシの細胞膜を崩壊させる性質があり、毒性の検証実験に用いられている。
 ミドリゾウリムシの細胞膜を崩壊させ、外にでたクロレラを観察することでミドリゾウリムシが細胞にクロレラを共生させていることを確認する。
  ・ 培養液1滴に家庭用中性洗剤を0.005%に薄めた溶液1滴を加えて観察する
  ・ ミドリゾウリムシの動きが変わり、やがて細胞が膨らんで細胞膜が崩壊する。


4 異物の排出の確認
体内に取り込まれた異物は、消化できなければ細胞口から排出されることを、食胞形成過程と排出過程を観察して確認する。
  ・ 培養液中に墨汁を加え、30分経過したら観察する。
  ・ 細胞内に墨汁を取り込んだ黒い食胞が観察できる。
  ・ 食胞が細胞内を循環したあと、細胞肛門から墨汁が排出される様子が観察できる。

 

   © 岩手県立総合教育センター 2005
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