家庭や適応指導教室との連携を図る事例(中1女子) |
「友達に無視されたということにより、登校できなくなった事例」 |
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この事例では、家庭や適応指導教室との効果的な連携を図る視点に焦点をあててまとめました。 |
問題の概要 |
M(1年生女子)は、中学校入学後、学級の友達に無視されたということにより、登校渋りがみられ、6月中旬から不登校となった。7月末の夏休みにかけて、担任と教育相談担当が週に一度ずつそれぞれ家庭訪問を行うとともに、担任による毎日の電話連絡を行い、学校の様子を伝えたり、別室登校を勧めたりする働きかけを行っていた。
また、学校では、友達によるMへの無視の事実は、明確に確認できなかった。こうした中、Mは学校には行きたい気持ちがあるものの、無視した友達のことが気にかかり、別室登校もできない状態が続いていたので、適応指導教室への通室を勧めた。
8月の夏休みには、Mが家庭からの外出をほとんどしなくなった状況がみられた。そこで、学校からの定期的な家庭訪問に加え、適応指導教室の担当でもある教育委員会の教育相談員の家庭訪問を学校から依頼し、学校と教育委員会が連携して家庭訪問を実施し、Mに別室登校や適応指導教室の通室を働きかけた。
2学期になると、Mと母親が適応指導教室の見学を希望し、担任と一緒に見学することになった。
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チームによる対応 |
1 チーム(複数教員)による対応 |
不登校になったMや家庭に対しては、男性の学級担任に加え、女性の教育相談係が対応の中心となり、役割分担をしながら指導・援助にあたることにした。
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2 アセスメントの実施 |
Mが登校渋りを見せていた頃、頻繁に保健室に出入りをし、顔をみせていたので、学級担任と教育相談係に養護教諭を加えた3人のチームが核になって検討会議を行った。
Mとの面談、教師による観察や保健室での様子、両親と学校の友達から提供された情報をもとに、アセスメントを行った。特にMの言動と友人関係に沿ったアセスメントを中心に行った。
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3 主な指導・援助方針と対応 |
(1)家庭訪問などでは、Mが指摘した友達の無視によるダメージを受容的・共感的に受けとめるように努める。 |
(2)友達によるMへの無視の事実は明確に確認できなかったが、友達や級 友との関係改善を図る手がかりを模索する一方、当面は本人と担任や教 育相談係との人間関係づくりを図ることを目標とした。 |
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(3)Mは無視した友達のことが気になり、別室登校はできないものの、学校 には行きたいという気持ちをもっているので、適応指導教室の通室から結 びつける方向で、Mや家族に対して働きかけることにした。 |
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効果的な連携を図る(家庭との連携・適応指導教室との連携)
家庭や専門機関(適応指導教室)との効果的な連携を図る視点と、その内容についてまとめてみます。 |
◆◇家庭との効果的な連携の視点1◆◇ |
家庭訪問を担任と教育相談担当が分担したのはなぜでしょうか?
−多様な複数の働きかけを考える− |
Mが登校できなくなり、担任と教育相談担当が週一度ずつ、それぞれ決まった曜日に学校の様子を伝えるなど「ちょっとした連絡」を持参し、短い時間の家庭訪問を行った。
その中で、Mが無視したと指摘した友達からの聞き取りなどから、担任はMの思い違いもあることを話し合ったり、友達との関係改善を図る手がかりを模索する働きかけを行った。さらに、学校には行きたいが友達が気になり登校できないというMの気持ちに寄り添い、Mの思いを生かすような受容的な態度で接するように努め、担任は登校刺激を控えた。
また、Mの登校は当面は無理ととらえ、Mに対して別室登校の勧めを働きかけるなどの登校刺激は、教育相談担当の家庭訪問で行った。担任と教育相談担当は、お互いに働きかける内容を分担し合い、多様な働きかけを行うように努めた。
このような働きかけによって、複数の職員による家庭訪問は、Mや家庭の状況を多面的に理解することにつながり、学校職員とMとの人間関係を深めたり、学校と家庭との連携をより結びつけたりするものとなった。
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◆◇家庭との効果的な連携の視点2◆◇ |
Aほぼ毎日の担任による電話連絡はなぜ継続したのでしょうか?
−本人の状況を理解し指導・援助方針を考える−
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担任による毎日の「こまめな」電話連絡は、Mや家庭に学校の様子を伝えながら、『本人のことを学校や学級は忘れていないよ』『いつもMのことを気にかけているよ』といったメッセージになると考えた。
また、家庭訪問で勧めた別室登校の誘いなどに対する本人や家庭の思いや考えを把握し理解することに役立った。さらに、今後のMに対する指導・援助方針の検討や修正に生かすことができた。
このような家庭訪問や電話連絡の働きかけや家庭とのつながり(連携)が適応指導教室への通室を勧める働きかけに結びついた。
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◆◇家庭との効果的な連携の視点3◆◇ |
保護者から学校への働きかけによる連携づくりはどのようにしたのでしょうか?
−家庭から学校へのつながり場面を考える− |
学校からMや家庭への定期的な家庭訪問や電話連絡を継続しているうちに、家庭での本人の週末の様子について、家庭(母親)側から学校に対して、週はじめには電話連絡をしてもらうようにした。また、本人に配布されたプリント類を受け取りに、毎週木曜日の放課後には母親が学校に取りに来てもらうようなつながり(連携)をつくるようにした。
このような保護者から学校への電話連絡や学校を訪れてくれる具体的なつながり(連携 )場面をつくることで、保護者からMの好ましい小さな変化や成長についての情報が「こまめに」学校に提供されるようになった。
そのような情報が保護者からあった場合には、その変化や成長は、保護者のMへの関わり方が効を奏した結果であるという言葉がけを学校側から行うようにした。このことは、家庭と学校のよりよい連携が図られる関係づくりにつながった。
家庭との連携では、学校側からの働きかけが主となることが多い。しかし、家庭が学校に足を運んだり、電話連絡をしたりすることができる状況にある場合には、このような連携も考えていく必要がある。
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◆◇適応指導教室との効果的な連携の視点◆◇ |
適応指導教室には誰がどのようにつなげたのでしょうか?
−他機関との連携は担当の明確な位置づけを− |
Mは登校はしたいものの無視した友達のことが気になり別室登校もできないでいた。
そんな中、別室登校に結びつけるために、適応指導教室への通室を勧める働きかけを教育相談担当が中心になって行った。
また、適応指導教室担当の教育委員会教育相談員とのMの通室に向けての打ち合わせの依頼は教頭が行った。具体的には学校の教育相談担当と教育委員会の教育相談員がそれぞれの担当窓口となりMの支援に向けての情報交換と打ち合わせを始めた。
このように、学校と適応指導教室の担当者がそれぞれ明確に位置付けられ、「必要なときに」「気軽に」担当者が情報交換できる関係をつくることが効果的な連携に結びついたものと考える。
このような連携の中から、適応指導教室の通室を誘う教育委員会教育相談員の家庭訪問を学校から依頼することができたり、Mと母親の適応指導教室の見学につながったりしたものと思われる。
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