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チームをつくり役割分担によって適応が図られた事例(小学校4年生女子)
「プール学習の不安から登校を渋りはじめた事例」
キーワード
チームによるアセスメント サポートチームの明確化 柔軟なチーム会議

この事例の解説では、チームで取り組む手順に焦点をあててまとめました。
問題の概要
 Dは成績も優秀で、学級委員長に立候補して選ばれ、周りの子どもたちからの信頼も厚かった。4月下旬、クラスの女子とのけんかをきっかけにひどく落ち込んで1時間授業に参加することができないことがあった。
 6月のプール開きのとき、寒いと言って体を震わせ見学となり、次のプール学習が近くなると、朝から腹痛や頭痛を訴えるようになり6月末に2日連続して欠席した。


チームによる対応
1 チーム(担任、養護教諭、生徒指導担当)による話し合い(第1回会議)

 次の日、Dはなんとか母と一緒に登校したものの、教室に入ることができず、保健室で午前中母と過ごし給食を食べずに下校した。そこで、養護教諭、担任、生徒指導担当が集まってDへの対応について話し合った。
  3年生4月後半に、1、2年まで仲のよかった友だちと離ればなれになったため、友だちがいないと言って登校を渋ったことがあったこと。やはり6月の水泳学習をきっかけに登校ができなくなったこと。保健室や別室で母と一緒であれば過ごすことができ、9月からは一人で登校し、9月の学年水泳記録会にはなんとか参加してバタ足で6m泳ぎ、その後欠席がなかったこと等が確認された。

2 サポートチームの明確化(第2回会議)

  次の日、生徒指導担当の呼びかけで、校長、教頭、相談員、1、2年生の前担任を加え話し合いがもたれた。
  前担任は、4年生になって友だちと遊んだり活動的な様子が見られたりするようになってきたが、1、2年のときにうまくいかないと泣いた場面が何度もあったこと、相談員から、何事も完璧でなければいけないと受けとめている傾向があること等が話された。そこで、当面、保健室、別室を中心に養護教諭、生徒指導担当が中心となってDの興味・関心やできることに取り組んで安心感をもって保健室で過ごすことができるようしながら、活動を広げ、教室復帰をめざすこと、昨年も母と面談していた相談員が母の不安を受けとめること、水泳学習は無理をさせないようにすることを指導・援助方針として取り組むこととした。
  チームでの会議において、本人との面談、両親からの情報提供、教師による観察、心理検査からアセスメントを行った。とくにAの言動にそったアセスメントを中心とした。

3 指導援助の評価(第3回会議)

  夏休みの校内生徒指導事例研究会でDの事例が報告、検討された。Dは水泳学習には参加しなかったが、保健室から、教室に近い会議室に活動の場を移し、調子がよければ、図書室や音楽室など教室以外の場面でクラスの子どもたちと一緒に活動できるようになっていたことから、次第に適応が図られていると判断された。
 2学期は、Dに水泳学習への投げかけをしながら自己選択を促すこと、また母が毎日Dと学校で生活をしなければならず、焦りや疲れが見えることから、母と少しずつ離れる時間を設けること、優しく接する人(相談員)と厳しく現実を教える人(担任)の役割を分担することを確認した。

4 新たなチームによる指導援助方針の調整(第4回会議)

  2学期が始まり、Dは母から離れて1、2時間程度教室に入って活動したり、給食も友だちと会議室で食べたりすることができるようになった。水泳大会を間近に控えて、クラスの女子からDも一緒に入ろうと励ましがあった。しかし、次の日、Dは欠席し、再び教室に入ることができなくなった。また、担任が今度の水泳大会について、参加する、しない、見学する、教室にいるとの選択肢を示したが、本人は体を硬くして決めることができなかった。

  あらためて、生徒指導担当、担任、養護教諭、相談員が話し合いをもった。相談員から母との面談でDが祭りでくじを引いたとき、どの商品をどこからとればいいのかお店の人に聞くことができず立ちすくんで泣いてしまったこと、担任から図工の学習で、完成していた下書きに色塗りをはじめたが、イメージした色と違っていたため、何も言わず動きが止まってしまったことが示された。これらから、Dはいやなこと、困ったこと、できないこと、こうしてほしいと思ったことがあるとき、どのように行動したらよいか戸惑い、その時の気持ちを言葉に出しにくいことが分かった。従って、目の前の課題で立ち往生してしまう特徴をもっているのではないかと理解した。

 そこで、担任は、Dが困った場面や、どうしたらいいか分からないという場面で意思表示がしやすくなるように、Dとサインを決めて、Dが自分の思いを表現しやすいようにしたり、言語化したりして受けとめること、Bのつまづきの傾向を事前につかんで、取り組みの段階をかなり細かくして取り組ませ、できていることを意図的にフィードバックしていくこと、相談員がこれまで同様、母との面談を継続しながら「あなたはそういうふうに思ったんだね。こんなふうに話したかったんだね」と受けとめる対応を母にお願いすることとした。

5 学年会による話し合い(第5回会議)

  水泳大会を間近に控え、学年会でDへの対応について検討した。担任はDに無理をして水に入らなくてもよいこと、その場合、担任の補助として記録を写す簡単な役割をもたせできたら学年主任、担任が評価すること、自由時間に楽しむときは、浅いプールに入ってよいこととして参加することを呼びかけた。大会当日は、担任が記録表をDに渡し、「泳いできた友だちが前回より記録が良くなっていたら声をかてあげてね」と促し、Dは多少緊張した様子を見せてはいたがクラスの女子に「記録が速くなったよ」と声をかけることができた。水泳大会が終わって、Dの表情がよくなった様子がはっきりと分かった。

6 母を交えたチームによる話し合い(第6回会議)

  Dは9月中旬以降、教室で過ごすことが多くなり、学年のマラソン大会にも参加し満足感をもった。学習発表会に向けて、担任の予想通り、主役に立候補しセリフもすぐ覚えることができた。しかし、全体練習に出ることができず、登校を渋る日もあったことから、母にも話し合いに入ってもらい担任、養護教諭、相談員で具体的に対応を次のように検討した。
  ・学校、家庭で全体練習に出ないとみんなに迷惑をかけるというメッセージを出さないこと。
  ・Dはうまくできるかどうか不安なので、学校、家庭が「あなたはできるよ、部分練習はできているから大丈夫」とできていることをもとに評価し励ますこと。
  Dは学習発表会で見事に主役を演じ、以降元気に教室で過ごしている。

こんなところにも注目
■サポートチームを明確化しながら、Dの適応状況に応じて指導・援助の内容を評価調整し、チームを弾力的に編成して対応したこと
■母親も強力な援助者ととらえ「チームの一員」に位置付けたこと
■生徒指導担当がコーディネーターとなって、校内の連絡調整、会議の呼びかけ、 情報の収集・提供をこまめに行ったこと

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